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□ 全身ラバーの100円シャープペン

 100円という制約の上でのベストは、1つの道だけではないハズです。

 100円のシャープペンにもいろんな形があって、世代によっていろんな形を思い浮かべるところではないかと思います。自分の中での100円シャープはというと、現在主流の肉厚ラバーグリップ+透明再生樹脂でやや太めというシャープペンではなく、鉛筆に近い形のシンプルなシャープペンが浮かんできます。

 そんな鉛筆型100円シャープペンの中にも柔らかすぎずベタ付かないラバーを全身にまとったシャープペンがありました。人呼んで「全身ラバー」。100円シャープならではの軽快さはもちろん、鉛筆に近い自然な形なのに鉛筆にはない柔らかさがうれしいところで当時としては斬新だった記憶があります。周囲の色をゆがんだ形で軸に写し込んでしまう透明軸と比べて、カラーリングも単色でシンプル。ラバーは反射も少ないので筆記時に視線移動を繰り返す目の負担を考えてもほんの少しだけ優しいような気がします。金属軸が冷たい寒い季節にももってこいですね。

ゼブラ「Rubber 101」

 ゼブラ「Rubber 101」。グリップに入った5本の溝が特徴的なロングセラーモデルです。直径は約9mmと、鉛筆に比べるとやや太め。硬めのラバーと深めの溝で、使用感としてはハードな印象があります。クリップは貧弱な感じが否めないながらも、位置が固定されてる分全身ラバーの100円シャープとしては割としっかりしてる方ではないかと思います。同じ形のボールペン版もそろってるのがうれしいです。

パイロット「SUPER 0.5」

 パイロット「SUPER 0.5」。名前からすると「SUPER GRIP」シリーズの前身なのでしょうか?直径約「Rubber 101」と同じく約9mmですが、5本の溝の間隔が狭くなってます。その分先端パーツがシャープになってるところがパイロットらしさ。金属チャックでスライドパイプと、機能的にもしっかり。ノック音が大きいせいか豪快でアメリカンな印象さえあります。軸に値段が書いてあるのもこの時代ならではですね。

サクラクレパス「NOCKS (NS 100C)」

 サクラクレパス「NOCKS (NS 100C)」。こちらも同じく硬めのラバーで5本の溝が入ってますが、こちらは溝も浅く直径は約8mmと細め。金属チャックでクッション機能付きと機能的にも貫禄の1本です。芯の補充もクリップごと引き抜いて1アクション。手慣れた人になると親指だけでクリップを押し上げて引き抜いてしまいます。軸色はおなじみクーピーペンシルと同様の色番になっているため、一緒に並べるとおそろい感覚を味わえるかな。

サクラクレパス「NOCKS (NS 100)」

 サクラクレパス「NOCKS (NS 100)」。クリップなしのこちらが元祖です。クリップのあるなしだけで基本スペックはほとんど同じかと思いきや、こちらは樹脂チャックでクッション機能なしのスタンダードな1本。よく見ると先端パーツもやや長め。ラバーはこちらがざらざらしていて上質感があります。兄弟モデルなのに使い比べると意外と違うのが不思議なところですね。それにしてもキャップの形、かわいいなぁ。

三菱鉛筆「M5-102」

 三菱鉛筆「M5-102」。三菱鉛筆にも全身ラバーの100円シャープペンはちゃんとありました。直径は約9mmとやや太めで、溝の間隔は「SUPER 0.5」よりわずかに狭いくらい。溝の幅が広く、深いので刺激を求める方にはおもしろいかもしれません。ノックするとクリップ部分ごと動くのは「NOCKS (NS 100C)」に似た感じ。こちらは丸い頭と可動部をすっぽりと覆うような形が個性的というか、どこか現代的な1本です。

トンボ鉛筆「MONO SHARP」

 トンボ鉛筆「MONO SHARP」。こちらはブラック+グレーでシンプル。直径は約8.5mmと「Rubber 101」と「NOCKS」の中間くらいになります。他のラバーシャープよりもちょっぴり長めの3.3mmガイドパイプになってるところがこだわりポイントでしょうか?今回紹介のシャープペンの中で唯一のタイ製なのですが、ツボはしっかり押さえてるのか品質面で特に気になる部分はありませんでした。全体的にツヤ消しなので見た目としてもきれいです。

ぺんてる「SHARPLET 100」

 ぺんてる「SHARPLET 100」。直径8mmとやや細め。丸みを帯びた六角軸と大きめのキャップがより細さを際立てているからなのか、丸軸で直径約8mmの「NOCKS」よりも細いように感じます。ぬめっとしていて柔らかいラバーに心地良いノック感。ベースにある使いやすさの中に他のメーカーにはない個性的な一面をちらっと見せるところが何ともぺんてるらしい1本。軸色ときれいな白と対比させるようなカラーリングもきれいです。

ゼブラ「KNOCK PENCIL (RUBBER 100)」

 ゼブラ「KNOCK PENCIL (RUBBER 100)」。樹脂軸100円シャープ「KNOCK PENCIL (M-1300)」の姉妹機なのでしょうか。こちらも六角軸で柔らかめのラバーですが、ゼブラということで直径約8.3mmと少しばかり太めになってます。「Rubber 101」では面倒なクリップ外しがこちらでは簡単なのもこだわり派にとってはありがたいところ。変に個性を主張したがらない平凡な外観もいいところの1つなのかもしれません。

ゼブラ「KNOCK PENCIL (RUBBER 100)」

 セーラー万年筆「MECHANICAL PENCIL」。オートがシャープペンシルならこっちはメカニカルペンシルだ!みたいなノリが感じられます。ネーミングの順序としては逆だったような気がしますがそれはさておき、直径は8.6mm、鮮やかな色がきれいな1本。若干頼りないノック感ですが、スライド式の樹脂パイプで先っぽまでしっかり黒くまとまったのがこの時代のセーラースタイル。キャップの樹脂がやけに柔らかく、プニプニしてるのもセーラーらしさなのかもしれません。

ゼブラ「KNOCK PENCIL (RUBBER 100)」

 セイワ・プロ「シャープペンシル レギュラー」。100円ショップで2本100円なので厳密な意味での100円シャープペンとは言えないのですが、たまにはオマケもいいでしょう。今となってはクラシックな全身ラバーと現代風の透明キャップのコラボレーションを試みた1本。ラバーの成形、メカの精度、使い心地、いろいろな面において安定感がなく、価格を考えても厳しいところ。平成生まれの全身ラバー、もう少しがんばってほしいです。

 すらっとした見た目と柔らかい軸。それに安定感のある固定パイプ。かつては流行したスタイルにも関わらず最近はすっかり見かけなくなってしまいました。こないだまで全身ラバーの100円シャープペンでは唯一、現在も製造されてると思ってたラバー101までもが、いつのまにやらカタログからもネット通販からも姿を消してしまい、このタイプのシャープペンはすっかり手に入りにくくなってしまったのが現状です。懐古主義者になるつもりはありませんが、古いもの自体よりも古き良き形と設計思想が市場から消えてしまうのは残念でなりません。現在の製品群で代わりになるものがあるといいんですけどね。

 100円シャープペンは手軽な普及品であるからこそ、シャープペンにおける最小構成としての魅力がしっかりと内蔵されてほしいと個人的には考えてます。間違ってもシャープペンの最低級品ではありません。肉厚ラバーグリップ+透明再生樹脂、そろって右ならえのカラーリングが悪いとは言いませんが、もう少しいろいろな形の選択肢があってもいいのではないでしょうか?選べない100円シャープよりも、選べる100円シャープがうれしいですよね。

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