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□ シャープペンの各部名称(前編)

 実はシャープペンにもいろいろな専門用語がありまして、飛び交う専門用語に面食らうことは意外と多かったりします。そんなわけで今回は、頭の中に入ってることをメモ代わりにまとめてみました。個人的認識なので不適切なところもあるかもしれません。

(※画像は後で追加する予定です、しばしお待ちください。)

□ 1. パイプ(スリーブ、芯先)

 シャープペンの最も先端にある細長い部分です。筆記時に紙面を見やすくする働きがあり、芯の出口でもあり、小さいながらもシャープペンにとっては重要な部分になります。大きく分けると円錐状と円柱状のものがあり、円錐状のものは耐久性に優れることから筆記用のシャープペンに、円柱状のものは筆記時に見える範囲が広いことから製図用のシャープペンに多く使われてます。使用感に関わる部分も大きく、芯とパイプの間隔が広すぎるとガタ付きが大きくなるため安定が損なわれてしまいますし、逆に間隔が狭すぎると繰出時の抵抗になってしまい、ひどい場合は芯のわずかな個体差に対応できず芯が繰り出せなくなってしまうことさえあります。単純なパーツのように見えてもちょっとした加減が難しいのでしょう。

 もし強い衝撃を与えるなどで曲がってしまうと芯が引っかかってしまうため、折れやすくなったり、芯の繰り出しがスムーズに行われなくなったりという症状を引き起こすことがあり、特に製図用の重いシャープペンを使う時は衝撃に注意が必要です。曲がった場合は曲げ直すことで修理できますが、手作業による応急処置では症状が回復しないこともあるので万能とは言えません。わずかな曲がりは見た目だけでは判断できないこともあるので、購入時には数回ノックして、芯の出方をチェックするのが最善でしょう。

 一部の製図用シャープペンでは曲がってしまった時のために、先端部ごとの交換パーツが用意されてるものもあります。詳しくはメーカー、販売店までお問い合わせください。

□ 2. 先端部(口金、先金、首軸、テーパー、先軸)

 パイプを支える周辺部分です。パイプと同じく安定性に関わる部分で、ずれたり緩んだりすると安定性が損なわれるだけではなく、パイプとチャックとの間に横方向の力が入ってしまうため芯が折れやすくなります。後で外せる程度にきっちり締めておくのが良いでしょう。内部にはゴムパッキンのような弁が入っていて、繰り出された芯が落ちるのを防止する役割もあります。もしゴムがなくなってしまうと、ドロップ式の芯ホルダーのようにノックした時に芯が落ちてしまうわけです。

 多くの製品は中に詰まった芯を取り除くために回して外せるようになってますが、もし外しにくい場合は、輪ゴムをぐるぐる巻いて上から回すと難なく外せることが多いです。先端部が外せない製品は詰まった芯を取り除くことができないので、必然的にトラブルがあった時には不利になってしまいます。先端部が外せること、もっと言えばどこまで分解できるかは今後のメンテナンスを考えた上で、ひとつの購入基準になると言ってもいいでしょう。シャープペンそれぞれに立派な個性があるので「外せないのは買うな!」までは言いませんけどね。

□ 3. チャック(クラッチ、芯挟み)

 内部で芯を挟んでいる部分です。樹脂のものと金属のものがあり、樹脂チャックは低コストでノック音が静かという利点がありますが、強い筆圧には耐えられず芯が引っ込んでしまうことや長期使用でチャックごと割れてしまうことがあり、耐久性に難があります。金属チャックは耐久性としては問題ありませんが、ノック音が耳障りになる一面もあり、どちらが良いとも言い切れないところ。樹脂チャックは耐久性が劣ることから精度も悪いと思われがちですが、耐久性と精度はまた別の問題で、チャックからパイプに至るまでの工作精度にどこか1つでも問題があると金属チャックでも芯が折れやすく、詰まりやすくなり、トラブルを起こしやすいです。

 樹脂、金属どちらにしても長時間芯を噛ませておくと負担になることは確かなので、使用後は芯を外しておいた方が無難という話があります。しかし、ずっと噛ませておいたからといって1年や2年で壊れるようなものではありません。長期間の保存となると外した方がいいのかもしれませんが、よほどマニアックなこだわりがない限りそこまで神経質になる必要はないと思います。パイプ保護を考えると、クッション代わりに芯をセットしておいた方がまだいいのかもしれませんね。

□ 4. リング

 チャックの周囲を押さえている部分です。同じく樹脂と金属に分けられます。ノックするとまずチャックが押し出され、一定位置までチャックが押し出されるとリングが先端部に押さえられるような形で跳ね上ります。そしてリングが跳ね上がることで押さえられていたチャックが開き、開いたチャックがリングに当たることにより「カチッ」という音が発せられ、芯を挟んでいたチャックはゆるみ、リングが跳ね上がるまでにチャックが移動した距離分だけ芯が繰り出されます。奥深い構造の話になってしまいましたが、このような芯の繰り出しメカニズムを制御することに一役買ってるのがリングなのです。

 樹脂チャックでは樹脂リングと金属リングどちらの組み合わせも見られますが、金属チャックでは金属リングがほとんどです。金属チャックを使用したシャープペンのノック音が大きいと言われるのはこういった理由でしょう。

 芯の繰り出し量はリングが跳ね上がるまでのチャックの移動距離が関係しているため、軸の長さを変える、チャックの位置を動かすなどで移動距離を変えることにより芯繰り出し量の調整が可能になります。当たり前のように通り過ぎてしまいがちですが、よくよく見るとびっくりしてしまうくらいにうまくできてるものです。

□ 5. スプリング(ばね)

 パイプ(スリーブ)がシャープペンの手となる部分なら、スプリングは内側の生命線。シャープペンの心臓部分として言ってもいいでしょう。ノック式のシャープペンではスプリングの反発力がないと、ノックが押さえられたままになって戻ってこなくなってしまうため芯の繰り出しが機能しなくなってしまいます。ノックするごとに黙々と働き続けるだけではなく、ノックの重さ加減を司る部分としても重要な部分でしょう。

 使用ごとに、厳密に言ってしまうと空気に触れるだけでも少しずつ劣化していく部分なのですが、チャックと一体になってることがほとんどなので交換となると難しいと思います。ただ、現実的にはチャック以上に耐久性の高い部分なのでそれほど心配することではないでしょう。10年、20年前くらいのシャープペンなら動きは少々鈍くなってはいてもまだまだ平気で動いてますので、今のところは「生きてる間は大丈夫かな?」くらいの気持ちでいます。30歳、40歳になるとこのあたりの考えもまた変わるのかなぁ?

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