名前だけは復活を果たしたOMNIにも、昔は数々の伝説がありました。
「むかしむかしOMNIという消しゴムがありまして…」という話は消しゴム好きの間でもよく話題になるところで、消しゴムとしての基本性能の高さはもちろん、「用途別を考えてもそんなに種類が必要なのか?」と思わずツッコミを入れてしまいたくなるほどの豊富な種類には圧倒されるばかりでした。気が付いた頃にはもう製造中止になっていたOMNIですが、まさにバブル時代を駆け抜けた消しゴムならではの存在感。今見ても日本の消しゴムシーンに大きな影響力を与えたのではないかと思ってます。
そんなわけで、今回はOMNIシリーズの圧倒されるほどの存在感と伝説、そして開発者さんの情熱を忘れないように、伝説の消しゴム「OMNI」に関して知る限りのことを紹介してみます。
(※紹介文はパッケージより引用してます。)
最初は一般的なプラスチック消しゴム。プラス風に言うと「消ゴム」ですね。事務用消しゴムのパッケージには清涼感のある青と白を基調としたカラーリングが多いところを、この「OMNI」は何とも言えないオリーブカラーに種類ごとに色が違う2本ラインと意表を突いた色合いになってます。エッジのとがった「OMNI」ロゴに文字サイズを変えたゴシック体で数字を目立たせるデザインも一見不釣り合いに見えてなかなかおもしろいところ。「OMNI 4」には3種類のサイズが用意されていて、Sサイズが縦約1.9cm、横約5.1cm、高さ約1.3cm。Lサイズが縦約2.2cm、横約5.7cm、高さ約1.5cmと、新型OMNIと比べて厚みがあるのでちょっとだけリッチな感覚が味わえます。(SSサイズの詳細は手元にないのでわかりません。)
全体的なイメージとしてはこすって消えるというよりも、ねっとりと黒鉛を吸い取るように消えていく感じがあります。サクラ「FOAM ERASER W」やパイロット「FOAM ERASER」のような歯切れの良さこそないものの、手を動かした感覚以上にスーッと。今で言うとプラス「AIR-IN SOFT」やぺんてる「Ain 軽く消せるタイプ」のイメージに近いような感じもします。硬度は今のOMNIが硬い方から62、60、58。AIR-IN SOFTが54、DUST FREEが57、AIR-INが60、AIR-IN HARDが63ということから考えると、「OMNI 1」以外は硬めのセッティングになってます。素材の消字力の高さが柔らかさを必要としなかったのか、それとも当時は柔らかい消しゴムを作る技術がなかったのか。そのあたりはどうなんでしょう?
かつて絵描きさんの間では「OMNI 1」の愛用者が多く、ネット上でも製造中止を惜しむ声が多く聞かれたのはよく覚えてます。OMNIを使うまでにもいろいろな消しゴムを使いましたが、角が丸まっている時でも恐ろしい程までに黒鉛を吸い取るような消え方は今でも記憶に新しいところ。見た目でも価格でもなく性能ひとつで伝説とまで呼ばれた消しゴム。それがこのプラスチックタイプのOMNI1〜4なのです。新しいOMNIを含めても、現在製造されている消しゴムでこういう消え方をする消しゴムが存在しないなんて思ってしまうと使うのがもったいなくなってしまい、ここぞという時にしか使ってないのですが、この感覚を一度味わってしまうといつになっても忘れられないという、消しゴム好き、文房具好きにとって究極のアイテムの1つなのかもしれません。
そんな素晴らしい消しゴムがなくなってしまった理由はいくつかあるようですが、個人的には「環境への配慮説」が有力ではないかと見ています。ただ、実際のところはわからないので気になった方はメーカーさんに直接聞いてみるといいでしょう。
いつかは新しいOMNIが、名実共に旧OMNIを追い抜いてくれることを祈ってます。