Top > おはなし > オート「CORK BARREL・POCKET」
渋めの金属色が目に優しいコルク軸。500円(税抜)。
コルクはコルク樫という木の樹皮を加工したもので、凹凸があるので滑りにくく、弾力性があり、保湿性、吸湿性を持つ素材ということ。皮なんです。文房具ではコルクボード、喫茶店ではコースターで身近な素材なのですが、そんなコルク素材に渋めの金属色、T型ノックと、ありそうでなかったレトロなデザインを一気に詰め込んだシャープペンが今回の「CORK BARREL・POCKET」です。
「CORK BARREL・POCKET」に使われているコルクはどちらかというと全身ラバーの100円シャープペンと似たような感じで、コルクボードのように肉厚のコルクをふんだんに…と言うよりは軸の周りに薄いコルクシートをぺったり貼ったような雰囲気に近い質感です。コルクと言うには弾力性がやや物足りない感じはありますが、それでもラバーグリップとは明らかに違う暖かさ。金属部分もレトロ感だけのものではなく、渋めの色で反射が抑えられてるので目に優しく、目立たないながらも好印象でした。
軸上部はリングを反時計回りに回して外すとクリップが分離し、外せるようになってます。ラミー「scribble」でもおなじみの構造ですね。リング方式は手軽にクリップを外せてルックス的にも良好。さらに軸に傷が付きにくいと利点は多いはずなのですが、なかなか採用されていないのを見るとコスト的なところがあるのでしょうか。クリップを外してもコルクの凹凸のおかげでわずかながらも転がりにくく、意外と落ち着いてます。重さ約15g、重心はクリップを付けた状態でほぼ中心、外すとわずかに前寄りかなというくらい。若干ノックが引っかかるもののT型キャップのおかげなのかノックは軽く、重量感、重心ともにほど良い感じ。金属チャックで固定パイプなので芯が短くなっても安定感があって扱いやすいです。ただ、持ち歩くとキャップがカタカタ鳴るところに関してはオートらしからぬ作りの甘さが見えてしまいます。
コルク素材の難点は膨張、変形、変色、耐久性。木軸シャープペンがなじんでいく以上に変化が早く、1ヵ月も使い込むと水分を吸い込んで表面がしっとりしてくると同時に、使い込んだ卓球のラケットのようによく持ってる部分が変色してくるのがわかると思います。そういった変化を「なじんでいく」と取るか「劣化」と取るかでもまた違うので、ある意味では人を選ぶシャープペンかもしれません。手元にある1本はおよそ9年使っても目立った変化は変色のみ。実用上の問題点は極めて少なく、個人的にはいろいろ使った中でもかなりの完成度を持った1本ではないかと思ってます。見た目が気になるという弱点をカバーするために、黒コルクバージョンなんていかがでしょう?
コルクを使ったシャープペンとしては三菱鉛筆から「CORKFIT」、ぺんてるから「ERGoNoMiX 杉の香り入り」「ERGoNoMiX ひのきの香り入り」という製品が出てましたが、既製品に取って付けたようなコルクのミスマッチさ、オリジナリティ不足が支持されなかったのか、現在国内の筆記具ではオート1社のみがコルクでがんばってます。柔らかく、べた付きにくく、滑りにくく、環境にも優しい。筆記具には持ってこいの好素材を生かした製品がもう少しあってもいいのではないかと思うのですが、メーカーのみなさん、そのへんどうなんでしょう?